2026/10/05
株式会社村田製作所
代表取締役社長 中島 規巨
株式会社村田製作所(以下、「当社」)は、6Gでの活用が期待される100GHz超の高周波帯「D-band(110~170GHz)」に対応したアンテナモジュール※1(以下、「本モジュール」)を開発しました。
本モジュールの通信評価を実施した結果、135GHz帯での無線通信動作と最大8GHzの帯域幅での信号伝送、および送受信双方の2次元ビーム制御※2を確認しました。LTCC※3を活用したアンテナモジュールとして、D-band対応と送受信双方の2次元ビーム制御を両立した世界初※4の成果です。
本モジュールは、6G通信をはじめ、高速・大容量通信が求められる幅広い用途への応用が期待されます。

※1 アンテナモジュール:アンテナと無線信号の送受信・制御に必要な高周波回路を一体化したモジュール。5Gなどの高周波無線通信機器で用いられ、6Gでの活用も期待されている。
※2 2次元ビーム制御:電波のビームを、上下・左右の組み合わせによってさまざまな方向へ自在に向ける技術。100GHz超の高周波帯を利用する6Gでは、通信品質を維持しながら高速・大容量通信を実現するために重要な技術。
※3 LTCC:低温同時焼成セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramics)。複数のセラミックシートに配線などを形成し、積層・焼成して製造する基板技術。高周波信号を低損失で伝送できるほか、小型・高密度な電子回路の実現に適している。
※4 2026年10月4日 当社調べ
近年、フィジカルAIやデジタルツインなど、現実世界から得られる膨大なデータをリアルタイムに収集・解析・活用する社会の実現が期待されており、これまで以上に高速・大容量通信へのニーズが高まっています。高速・大容量通信の実現には、一度に送受信できる情報量を増やすため、通信に利用できる周波数の幅である「帯域幅」を広く確保することが重要です。
現在、4Gや5Gなどの移動体通信では、主に数GHz帯から28GHz帯までの周波数が利用されていますが、こうした既存の周波数帯は、放送や衛星通信をはじめとするさまざまな無線システムで既に利用されており、新たに広い帯域幅を確保することは容易ではありません。そこで、次世代通信システム「6G」では、これまで移動体通信での利用が限定的だった100GHz超の高周波帯を活用し、数GHz規模の帯域幅を確保することが期待されています。
一方、周波数が高くなるほど電波の波長は短くなるため、波長に応じてアンテナや高周波回路を微細に設計・実装する必要があります。また、高周波通信では、わずかな配線長の差や実装のばらつきが通信性能に大きく影響することから、高周波帯に対応しながら、高い通信性能と小型化・実装性を両立するアンテナモジュールの実現が課題となっていました。
そこで当社は、先端半導体技術の世界有数の研究開発機関であるimec※5との共同研究により、当社独自のLTCC基板技術を核に、135GHz帯での無線通信動作、最大8GHzの帯域幅での信号伝送、および送受信双方の2次元ビーム制御を実現するアンテナモジュールを開発しました。
当社は、材料から製品までを一貫して自社で手掛ける技術基盤を有しており、セラミックスを用いたLTCC基板についても材料から自社で開発しています。今回、本用途に向けてLTCC基板の材料を最適化することで、高周波通信に適した低誘電率・低誘電正接※6の特性を実現し、100GHz超の高周波帯でも損失を抑えた信号伝送を可能にしました。
さらに、当社が培ってきた高周波設計技術とパッケージ技術を生かし、imecが開発した「D-band(110~170GHz)」対応のビームフォーミングIC※7をLTCC基板に組み込むとともに、アンテナやRF配線などを微細かつ高密度に一体設計・実装することで、高い通信性能と小型化・実装性を両立した本モジュールを実現しました。

※5 imec:ベルギー・ルーヴェンに本部を置く、ナノエレクトロニクスおよびデジタル技術における世界有数の独立系研究開発機関。先端半導体、AI、次世代通信・センシングなどの研究開発を行い、世界各地の企業、大学、研究機関との共同研究を推進している。
※6 低誘電正接:材料内部での電気信号のエネルギー損失が小さい特性。高周波信号を効率よく伝送できる。
※7 ビームフォーミングIC:複数のアンテナから送受信する電波を制御し、通信相手の方向へ電波を集中させる半導体(集積回路)。高周波通信を利用する6Gでは、安定した通信を実現するための重要な技術。
本成果により、6Gで求められる高速・大容量通信に必要な主要技術の実現可能性を実証しました。
本成果は、通信領域に留まらず、フィジカルAI時代に求められるサブテラヘルツ(sub-THz)帯を用いたレーダー・センシングや通信とセンシングを統合するISAC※8への応用も期待されます。
また、本モジュールは量産実績のあるLTCC製造プロセスを基盤に、実用化・量産を見据えた技術開発を進め、2030年以降の市場への投入を目指してまいります。
当社は今後も、これまで通信領域において培ってきた独自の知見や技術を活用し、6Gをはじめとする次世代通信技術の発展に貢献してまいります。
※8 ISAC(Integrated Sensing and Communication):通信とセンシング(周囲の状況や物体の位置・動きなどを検知する技術)を同じ無線システムで同時に実現する技術。
ムラタについて
村田製作所はセラミックスをベースとした電子部品の開発・生産・販売を行っている世界的な総合電子部品メーカーです。独自に開発、蓄積している材料開発、プロセス開発、商品設計、生産技術、それらをサポートするソフトウェアや分析・評価などの技術基盤で独創的な製品を創出し、エレクトロニクス社会の発展に貢献していきます。
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